均質材料・質量による割合計算


英国は2020年2月1日、EUから離脱しました。(「合意なき離脱(ノー・ディール)」は回避されました)
英国へ製品を輸出している企業やその企業に関連する商流にある企業については、RoHSを含めたCEマーキングに代わる対応が新たに必要になる可能性があります。
※ちなみにUKCAマーキングについてはJETROの概要解説ページを参考に。

含有濃度の計算方法とwt%(質量%)

規制物質の最大許容濃度はANNEXU(付属書U)で物質ごとに決められています。
タイトルには「weight in homogeneous materials」とあり、直訳すると「均質材料(均一材料)中の重さ」となり、均質材料中の重さによって濃度が決められていることが分かります。

 

これだけでは分かりにくいので説明すると、RoHS指令での含有物質濃度は質量百分率で算出するということになります。

 

正直言うと、「重さ」という用語は、実は定義が難しいと思います。
正確に言えば、質量とか重量とか、似たような言葉があり、測定の方法も本来なら違ってきます。

 

ですが、重さとか質量とか重量とかという言葉は、物理学者ならともかく、RoHS指令の含有濃度計算ではそれほど用語の定義を気にすることもないと思いますので、普通に電子はかりなどで重さを測定して出てきた数値を使えばよいと思います。

 

質量百分率などと書くと面倒ですが、RoHS指令の含有濃度の計算では、
(規制物質(化学物質)※の質量)/(全体の質量)×100
のように計算して出てくる数値が含有濃度ということになります。

 

※規制物質によって計算方法が違います。
   下の「規制6物質の分子の計算方法」を参照ください。

 

また質量百分率は、質量%(質量パーセント)はなどとも言われるので、このサイトでは、質量%と記載しています。

 

計算方法をもう少し詳しく

RoHS指令の計算の場合、均質材料中の質量%、つまり、

@同じ材料の重さを分母にし、
A制限物質(規制6物質)の重さを分子

として計算された数値が濃度ということになります。

 

質量%(重量%)は、一般的にはwt%(読み方:ウェイトパーセント)と単位表記されますが、この付属書Uでは、タイトルで重さでの濃度のことを言っていますので、あえてwt%とは書かず、単位は%のみになっているものと考えられます。

規制6物質の分子の計算方法

RoHS指令では、均質材料の重さ(質量)を分母にし、その中に含有している規制物質について濃度を算出する必要がありますが、気をつけなくてはいけないことがあります。

 

含有濃度計算時の分子は、以下のようになります。

  • 重金属(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム)については、元素そのものの重さ
  • PBB、PBDEについては、PBB、PBDEそのものの重さ

 

計算例

その1

均質材料100g中に、二酸化鉛(PbO2)10gが含有しているとします。
この中で、規制物質である鉛の濃度は以下のように計算されます。

  • 二酸化鉛中の鉛の割合:
    207.2/(207.2+16.0×2)=0.866(鉛の原子量:207.2、酸素の原子量:16.0より)
  • 鉛の含有量:10g×0.866=8.66g
  • 均質材料中の鉛の濃度:8.66g/100g×100=8.66%

最初に計算した鉛の割合(0.866)は換算係数と呼ばれており、二酸化鉛なら0.866、鉛そのものなら1など、物質によって決まった値をとります。

 

その2

均質材料100g中に、PBB10gが含有しているとします。
この中で、規制物質であるPBBの濃度は以下のように計算されます。

  • 均質材料中のPBBの濃度:10/100*100=10%

PBBやPBDEは臭素系の化合物で、臭素が結合している数(1〜10)によって物質が異なりますが、どの物質も規制対象です。

 

 

RoHS指令では、規制物質に対する濃度が重要です。

 

重金属(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム)の化合物の場合は換算が必要な場合が多いですが、含有物質の調査依頼フォーマットによっては化学物質名やCAS No.を入力すると、自動で規制物質の含有濃度が計算される場合もありますので適宜対応しましょう。

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