REACH規則、SVHCと閾値


英国は2020年2月1日、EUから離脱しました。(「合意なき離脱(ノー・ディール)」は回避されました)
英国へ製品を輸出している企業やその企業に関連する商流にある企業については、RoHSを含めたCEマーキングに代わる対応が新たに必要になる可能性があります。
※ちなみにUKCAマーキングについてはJETROの概要解説ページを参考に。

SVHCと閾値、認可対象物質と義務について

REACH規則では、高懸念物質と呼ばれるSVHC(Substances of Very High Concern)について、「認可」という制度を設けています。
SVHCを簡単に言えば、発がん性や難分解性があるもの等、何かしらの有害性を持つ物質のことで、1,500物質ほどがリスト化されています。

 

この有害性が高い物質のうち、特に有害性が高いと選定された物質については、「認可」を受けないと、原則、EU域内で製造や輸入等ができなくなります。
逆に言うと、EU域内では、特に有害性が高い物質は「認可」された用途でないと使えないということです。

 

認可という許可制度ができたために、「勝手に」とか「好きなように」使えなくなる物質がどんどん選定されていっているわけです。
この認可対象物質はAnnexXIV(付属書14)でリスト化されています。

 

認可対象物質の選定

SVHCには多くの物質があるので、優先順位をつけて「認可対象」にする物質を選んでいます。

 

認可対象物質は、

  1. 認可対象候補物質(Candidate list 収載物質)から選ぶ
  2. Candidate listに収載する物質リスト(上記1のこと)は
    さらに認可対象候補物質にするための候補物質リストの中から選ぶ
  3. 認可対象候補物質の候補物質リスト(上記2のこと)はSVHCの中から選ぶ

という段階を経て選定されています。

 

つまり、1,500物質ほどあるSVHCの中から、優先順位をつけて認可対象にする物質と使ってもいい用途(EU域内で原則、製造や輸入ができないようにする物質とその用途)を選定するということです。

 

日本国内での「SVHC」の用語の使われ方

日本国内では、「SVHC」という用語はあいまいなまま使われ続けています。
上記1のリストである認可対象候補物質(Candidate list)のことを指す場合もあれば、上記2の認可対象候補物質の候補物質を指すこともあります。
もっと広義にとって、本来の意味である1,500物質ほどある高懸念物質:SVHCのことを指している場合もあります。

 

話す方によって何を指しているのかが違う場合があり、話の筋から推測しなくてはいけないこともしばしばですので注意が必要です。

 

本サイトで言う「第○次 SVHCリスト」とは

上記の認可対象候補物質(Candidate list 収載物質)のことを、本サイトでは「第○次 SVHCリスト」と言っており、認可対象候補物質(Candidate list 収載物質)の候補物質リストのことを、本サイトでは「第○次 SVHC候補物質リスト」と言っています。

 

ですので、「第○次 SVHCリスト」の中から、認可が必要な「認可対象物質(AnnexXIV;付属書14収載物質)」が選定されていることになります。

 

ちなみに認可対象物質は、REACH規則ではAnnexXIV(付属書14)でリスト化されていますが、REACH規則が制定された時点で出来上がっていたリストではなく、半年に1度のペースで追加が行われています。

 

それが、本サイトでも取り上げている「第○次 SVHCリスト」、このリストの候補物質である「第○次 SVHC候補物質リスト」になります。

 

ややこしいですね。

 

SVHCリスト(Candidate list)収載物質の義務と閾値

さて、このSVHCリスト、正確には認可対象物質の候補物質リスト(Candidate listと呼ばれます)に収載されている物質ですが、この物質には2つの大きな義務があります。
1つはEU域内の監督官庁(ECHA;欧州化学品庁)への届出の義務、もう1つが情報伝達の義務です。

 

どちらも「EU域内の会社」に課せられる義務なので、直接 日本国内の企業が何かをしなくてはいけないということはありませんが、EU域内の会社へ情報を伝える必要はあると考えられます。

 

届出の義務

成形品(アーティクル)中に含有する「SVHCリストに収載されている物質」は、使用している量が多い場合には原則、届出が必要になります。

 

「SVHCリストに収載されている物質」のことを、ここでは単に「SVHC」と呼ぶことにしますが、届出が必要になるのは、成形品中の濃度、つまり閾値が0.1wt%を超えていて、1年あたりの取扱量の合計が1トンを超えている場合です。

 

このときの合計量の計算は、EU域内の会社単位で行います。
例えば、このEU域内の会社で5社の取引先から「0.1wt%を超えてSVHCを含有する成形品」を購入しているのであれば、5社分を合計して1トンを超えるかどうかを計算する必要があるということです。

 

この「取引先(部材の購入先)」にはEU域内か域外かの区別はなく、どちらも対象になります。

 

なので、0.1wt%を超えてSVHCを含有する成形品をEU域内へ輸出している場合は、自社だけで1トンを超えていなくても、EU域内の会社へSVHCの含有濃度と合計量を知らせる必要があります。

 

情報伝達の義務

「SVHC」については、川下のユーザに対して、少なくとも物質名を含んだ、安全に使うために必要な情報を伝達する必要があります。

 

この情報伝達を必要とする閾値も、届出の義務と同様の「成形品中の濃度が0.1wt%を超える場合」です。
ただし届出の場合とは違い、総量の1トンという縛りはなく、濃度が0.1wt%を超える場合全てが対象になります。

 

また、消費者からの要求があれば、45日以内に「少なくとも物質名を含んだ、安全に使うために必要な情報」を提示しなくてはいけません。

 

0.1wt%の分母は?

0.1wt%の計算は「成形品(アーティクル)」を分母にしますが、この成形品とは、「成形品と判断される個々の成形品である」という解釈が、2015年9月10日に欧州司法裁判所から出ています。

 

「電気電子製品の全体質量ではなく、部品単位で計算する」という解釈になります。

 

※正確に言えば、物質や調剤(混合物)から初めて成形品になるタイミングが
   「成形品」という扱いになりますが、日本国内でこれを追うのは非常に難しいため、
   購入品単位で計算していたり、RoHSの計算方法と同様に、
   均質単位で計算して管理するところもあるようです。

 

このあたりは自社でどのような管理をするか、決めていく必要がありますね。

 

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