REACH規則制定の背景
EUのREACH規則制定の背景には、1992年の「 環境と開発に関する国連環境開発会議(地球サミット) 」や「 アジェンダ21 」で目標とされている、国際的な化学物質管理,有害物質管理への取り組みがあります。
EUではECHA(欧州化学品庁,欧州化学物質庁)を新たに設立し、化学物質の登録,評価,認可,制限等、化学物質の規制を行うこととなりました。
各国の化学物質規制法
日本をはじめほとんどの先進国には、化学物質の管理や有害物質の製造や使用を規制する各種法律があります。
そのほとんどで化学物質を既存物質と新規物質に分けています。 既存物質とは法規制が制定された時点で既に市場に流通していた化学物質のことを指し、新規物質とは法規制制定後に市場に投入された物質のことを指します。
日本では、既存物質については化学物質の安全性評価が免除されていますので、製造業者や輸入者が既存物質についての安全性評価をすることはないに等しいといえます。 既存物質を使用しているからといって、安全性評価を義務付けられていないからです。 既存物質については国が安全性評価をすることになっているのですが、思うように点検は進んでいません。
EUでも化学物質の規制として、危険な物質の分類,包装,表示に関する理事会指令:67/548/EECがありますが、第6次修正指令79/831/EECおよび7次修正指令92/32/ECにおいて、既存物質リストの作成や新規物質の検査分析および届出の制度化や安全性評価が義務付けられました。
物質は、1971年1月1日から1981年9月18日までに市場に流通した化学物質を既存物質とし、それ以降に上市された物質は新規物質として区別されています。 既存物質は、EINECS(読み方:アイネックス)というデータベースに収載(掲載,登録)されており、EINECSに収載されていない物質は新規物質として安全性の評価が行われた後でないと市場に流通させることはできません。
EINECSは欧州既存商業化学物質リスト(通称:既存化学物質リスト)と呼ばれており、新規物質の安全性評価が行われ、届出されたからといってその新規物質がEINECSに追加されることはありません。 あくまでも既存物質のリストになります。
EINECSに収載されている化学物質には、EINECS番号と呼ばれるXXX-YYY-Zという形式の7桁の番号がつけられています。
なお、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどでも、年間生産量が一定量を超える化学物質に対して評価や有害物質対策等を実施するような規制があります。
各国の化学物質規制法
- 日本:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
- EU(欧州連合):危険な物質の分類,包装,表示に関する理事会指令 67/548/EEC ⇒ 関連法案含めてREACHへ
- アメリカ:有害化学物質規制法(TSCA)
- カナダ:環境保護法
- オーストラリア:工業化学品法
- 韓国:有害物質管理法
- 中国:新化学物質環境管理弁法
など
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