EUの法律体系


英国は2020年2月1日、EUから離脱しました。(「合意なき離脱(ノー・ディール)」は回避されました)
英国へ製品を輸出している企業やその企業に関連する商流にある企業については、RoHSを含めたCEマーキングに代わる対応が新たに必要になる可能性があります。
※ちなみにUKCAマーキングについてはJETROの概要解説ページを参考に。

EUの法令(法律・規制類)の体系

EUの法体系は一次法、二次法、判例の3種類から成っています。

 

一次法(条約)

一次法とは、EUの設立条約や改正条約にあたる基本条約を指しています。
加盟国政府間による直接交渉によって内容が合意されるもので、日本で言えば憲法に相当するものです。
EC条約(欧州共同体設立条約)やニース条約、アムステルダム条約、ローマ条約などがあります。

 

二次法(共同体立法)

二次法とは、一次法(条約)を根拠に制定され、EU域内で直接・間接的に企業や個人を規制する法令です。
一般に、企業が守らなければならない規制類は、この二次法になりますが、大きく分けて、規則(Regulation)、指令(Directive)、決定(Decision)、勧告(Recommendation)、意見(Opinion)の5種類があります。
条約に法的な根拠を持ち、EU法あるいは派生法と呼ばれています。

 

 

二次法の詳細

規則(Regulation)

EU加盟国の法令を統一するために制定される法令で、REACH規則などが該当します。

 

EU域内の国、企業等を直接規制するものであって、EU加盟各国の国内法よりも優先して適用されなければいけません。
簡単に言えば、EU域内で統一されたルールが適用されるため、EU加盟各国で同じ規制内容が適用される状態になるということです。

 

REACH規則(EC)No 1907/2006では、第141条に、「本規則はその全体において拘束力をもち、全加盟国に直接適用できるものとする。」とあります。注1)

 

指令(Directive)

EU加盟国間での規制内容の統一(調整)を目的とする法令で、WEEE指令やRoHS指令などが該当します。

 

原則として、通常はEU加盟国へは直接適用されず、国内法への置き換えが必要ですので、EU加盟国が「指令」を指令で定められた期日まで(基本的にはEU官報掲載後3年以内)に国内法として制定・改正する必要があります。

 

「指令」は、国内法で規定されたものがルール(規制内容)になりますが、国内法への転換の際には一定の裁量権が与えられているので、各国間で法令が異なる場合もあります。(全く同一にはならないという意味です。)

 

WEEE指令とRoHS指令の場合は、各々、EC条約第175条(=EU運営条約192条)、EC条約第95条(=EU運営条約114条)が選択されています。
改正RoHS指令(2011/65/EU)では、第28条に、「本指令は、加盟国に宛てられる。」とあります。注1)

 

EC条約第175条と95条(=EU運営条約192条、114 条)の違い

 

●EC条約第175条(=EU運営条約192条)とは
EC条約175条の環境政策による環境保全そのものに目的がある場合に採用されるもので、最低限の要求事項が定められています。
ですので、指令よりも厳しい国内法が制定でき、加盟国間で規制内容に違いが出ます。
WEEE指令は加盟国間で回収率や該当する製品区分などが異なっています。

 

●EC条約第95条(=EU運営条約114条)とは
EU域内(加盟各国間)で単一市場の達成を目的とする場合に採用されるもので、統一する要求事項(規制内容)が定められています。
ですので、指令よりも厳しい国内法を制定することはできず、同一レベルの要求事項(規制内容)が適用されることになります。

 

ただし、違反に対する罰則規定内容等は各国で異なることがあります。
RoHS指令は制限物質(禁止物質)や規制濃度(閾値)は同じですが、罰則は罰金や処罰の内容が異なっています。

 

決定(Decision)

EU加盟国内の特定の国、企業、個人などに限定して宛てられる法令で、直接拘束されます。(法令を遵守する必要があるのは、その特定された国や企業などのみになります。)
RoHS指令の適用除外追加の決定(例:2011/534/EU)では、第2条に、「本決定は、加盟国に宛てられる。」とあるので、EU加盟国全てに対して適用されることになります。注1)

 

勧告(Recommendation)

EU加盟国や企業などに行為や行動を期待することを欧州委員会が表明するもの。
法的拘束力、強制力はないものの、事実上、EU加盟国内での法令制定・改正などを促すものとされています。

 

意見(Opinion)

特定のテーマについて欧州委員会が意思を表明するもので、法的拘束力、強制力はありません。
「見解」と呼ばれることもあります。

 

 

これらの法律は、欧州連合理事会(EU理事会)、欧州議会、欧州委員会の3つの主要機関が決定します。

 

欧州委員会による法案提出時にはCシリーズとしてEU官報(Official Journal of the European Union:OJ)に掲載されます(欧州議会等の意見表明もOJのCシリーズで掲載)。
その後、欧州連合(EU)理事会によって採択された法令は、Lシリーズに掲載されます。

 

LシリーズとCシリーズの違いは、法令として採択されて掲載された拘束力をもつものか、通知として掲載された関連情報(調和規格等を含む)で拘束力をもたないかというところです。

 

 

注1)
規則、指令、決定等の二次法の対象国は基本的にはEU加盟国ですが、「(Text with EEA relevance)」と表題下に記載がある場合は、EU加盟国以外にも遵守が必要な国があります。対象国について、詳しくはEU、EFTA、EEAとEUの法令対象国のページを参照ください。

 

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