フタル酸エステル類の移行性ガイダンスの内容について:その2


今回は、フタル酸エステル類の移行について、
JAMP(アーティクルマネジメント推進協議会)から発行されている
ガイダンスの内容から、管理方法をどう決めたらよさそうか、
というところを考えてみたいと思います。

 

先回の続きです。

 

メルマガに登録されたタイミングによっては
「なんのこと?」ですね。

 

 

ちょっと復習すると、先回のメルマガでは、

JAMPからフタル酸エステル類の移行性に関するガイダンスが出ているよ、
簡単に内容を説明すると以下のような感じだよ、
というところをお話しました。

 

その内容というのがこちら ↓

 

(1)「移行」には接触によるものと非接触によるものがある
(2)非接触による移行量は無視していい程度
(3)無機物(金属やセラミック等)への接触による移行は無視していい
(4)有機物(樹脂やゴム等)には移行する
(5)有機物への移行量は温度や圧力に影響される
(6)移行される側の材料の厚みによって「均質材料としての含有濃度」は変わる
(7)実験してみた結果はこうだったよ(詳細はガイダンスで)

 

この内容を受けて先回は、
「各会社で管理方法を考えなさいよ」と書かれている
というところまでお話して、

 

次回は「管理方法をどう決めたらよさそうか」
というところを考えてみましょう、と言ってたんですね。

 

 

ということで。

 

今回は管理方法をどのようにして決めたらよさそうか
というところをお話したいと思います。

 

まず注目したいのは↑でも書きましたが、以下の4点です。

 

上記と同じ番号のまま書くと、

 

(3)無機物(金属やセラミック等)への接触による移行は無視していい
(4)有機物(樹脂やゴム等)には移行する
(5)有機物への移行量は温度や圧力に影響される
(6)移行される側の材料の厚みによって「均質材料としての含有濃度」は変わる

 

です。

 

ひとつずつ、見ていきますね。

 

 

まずは(3)(4)をまとめて。

 

この(3)(4)から、移行について気にしなくてはいけないのは、
「有機物(樹脂やゴム等)」であって、

「無機物(金属やセラミック等)」は無視していいということです。

 

ガイダンスでは、P6で
「金属や半導体等の無機物には浸透・溶解せず、
本ガイダンスで定義づけた接触による移行を起こさない。」

 

とキッパリ言い切っているわけですから、
そのまま素直に従っていいと思います。

 

無機物、つまり金属や半導体等の無機物は無視。
気にするのは有機物(樹脂やゴム等)だけでOKという考え方です。

 

 

私は、既存の設備関係については
「含有物質調査でフタル酸エステル類の含有を確認するのは無理」
と考えているので、

 

無機物でなければ、
フタル酸エステル類が入っていても入っていなくても
管理の対象として考えようと思っています。

 

 

次に考えるのは、(5)ですね。

 

こちらは温度や圧力といった「自社内で管理できる要素」について
説明されています。

 

ガイダンスでいうと、P11~13あたり。

 

私は簡単にまとめて(5)のように説明しましたが、
ガイダンスではもっと詳しく書いてあります。

 

直接影響を与える因子として説明されているのが、

 

・温度
・接触時間
・圧力
・油・アルコールの使用
・摩擦・振動・湿度

 

の5点です。

 

 

これらの項目は、ほとんどが管理できる項目なのではないかと。

 

管理できないとすれば、まず1つ目に挙がるのは温度。

 

空調が入っていない環境、たとえば倉庫などだと、
「もしかしたら高温になるかもしれない」
というところは気をつけなくちゃいけませんね。

 

あっ、低温の場合は無視です。

 

なぜなら、高温になると移行リスクは高まりますが、
低温になっても移行リスクは高くならないからです。

 

ガイダンスにもありますが、
高温になるほど移行リスクが高くなるんですね。

 

なので、低温の場合は無視です。

 

話を戻すと、
では「高温」とは何℃からなのか、という疑問が沸きますよね?

 

「低温」は何℃なの?という話はちょっと置いておきますが、
「高温」については、
ガイダンスのP12のグラフを参考にするとよいかと。

 

このグラフを見ると、
35℃を超えたあたりから伸び方が増えているように見えるので、
35℃というのがひとつの区切りになるのではないかと考えられます。

 

少し正確に言えば、
P14の接触時間と移行量の試算条件を加味して考えているんですが、

 

ちょっと話が複雑(でもないけれど)になるので、
今回は割愛しますね。

 

 

ということで、
私だったら、35℃までなら移行リスクは少ないと判断し、

35℃を超える室温になりそうな場合は
管理するようにしなくてはいけないかなと考えます。

 

逆に言えば、室温を35℃以下にする運用管理の方法を考えるということです。

 

 

次にもし考えなくてはいけないことがあるとすれば、
摩擦・振動・湿度のあたりですね。

 

ここは自分で調整・調節することができないかもしれないからです。

 

ですがこちらは、ガイダンスのP13で
比較的影響が小さいと説明されていますので、私だったら無視します。

 

それと、残りの「接触時間、圧力、油・アルコールの使用」は
おそらく自社内で管理できる項目と思われます。

 

なので、各々、

 

・接触時間は可能な限り短くする
・圧力はかけない(段積みが避けられないなら段数を少なくする)
・油・アルコールの使用は避ける

 

ということで管理ができるのではないかと。

 

接触時間については、ガイダンスのP12に

 

「論理的には、25℃で数日程度の接触では対策を必要とする程度の
可塑剤の移行は確認されていない」

 

とあります。

 

図5-2は後ほど説明しますが、
「数日程度だったら移行は無視できそう=1日の接触なら大丈夫そう」
と考えて、私は仕掛り品※の管理をしようかなと。

 

※仕掛り品:完成品になる前の半組立て品と考えてOKです。

 

もしくは、完成品の保管場所を有機物の上にしない、というところですね。

圧力をかけないというところも似たような考え方でOKと思います。

 

「どのくらいの圧力をかけたらNGか」は、
ガイダンス内で説明がないので明確な基準として提示できないのですが、

 

自重以上に圧力をかけざるを得ない状況になっているなら、
一度、測定してみるのもいいかもしれませんね。

 

その際は、
均質材料として分析することに気をつけてください。

 

表面だけ分析したら
移行の影響が大きく出てしまう可能性があります。

 

油・アルコールの使用については、使わなければいけないのであれば、

使うときは、たとえばステンレス板の上といった
無機物の上で作業を行えばいいと思います。

 

無機物には移行しないと説明されていますから。

 

 

今日のメルマガは長いですね(笑)
一気に説明してしまいますね。

 

 

最後の(6)です。

 

(6)は、移行される側の材料の厚みの影響について説明されています。

 

ガイダンスのP14、図5-2に、
「移行先の厚みと移行量の接触時間依存性」
というグラフがあります。

 

このグラフは、気温25℃で、
DEHPを30wt%含有しているPVC(塩ビ)からポリマーへ
DEHPがどのくらい移行するかという試算結果です。

 

ちなみにポリマーとは樹脂やゴムなどの有機物と考えてOKです。

 

詳細は割愛しますが、このグラフは
平均的な気温より若干高いと考えられる25℃で、
移行の可能性が高い材料、条件を選んで試算された結果です。

 

 

この結果から推定できる特徴的なところと言えば、

 

・移行先の材料の厚みが0.1mmの場合は、
1日と少しの時間で 0.1wt%を超えてしまいそうだ

・移行先の材料の厚みが0.5mmの場合は、
1ヶ月くらいは 0.1wt%を超えなさそう

 

という2点。

 

もちろん、気温が高くなったり圧力がかかったりすれば
移行量(均質材料中の濃度)は高くなりますし、

 

接触面積が大きくなれば、当然移行量も増加し、
濃度は高くなる可能性が大きくなります。

 

このあたりをまとめて考えると、
どう考えればよいか、どうすればよいかが見えてくると思います。

 

 

またガイダンスのP15からは、
実際の工程の中で、濃度管理をどのように考えればよいか
ということが説明されています。

 

私なら、一番初めに説明した(3)~(6)を踏まえたうえで、
悪条件にならない限り、まずは以下のような管理をしてみようかと考えます。

 

接触させる材料(移行先)の厚みが0.5mmを、

 

<超えない場合:つまり薄い場合>
接触日数を1日以内に抑える

 

<超える場合:つまり厚い場合>
接触日数を1ヶ月以内に抑える

 

 

それぞれの企業、担当の方の解釈によって
いろいろ方針は出てくると思います。

 

今回は、私ならどう考えるかという視点でお話してみました。
少しでも参考になれば。

 

それではまた次回!

 


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